萩と聞いて思い浮かべるのは、吉田松陰や高杉晋作、そして白壁の残る城下町。では、萩が温泉地でもあることはご存じでしょうか。
実は萩には「萩温泉郷」があります。歴史を歩いたあとに温泉へ浸かり、日本海の食を味わい、翌朝もう一度町へ出る。萩は、日帰りで史跡を回るだけでは少しもったいない場所です。
今回は萩の温泉について知りたい人に向けて、個性の異なる5つの宿をご紹介します。選ぶ基準は単なる人気順や価格順ではなく、そこでどんな時間を過ごしたいか。自分の旅に合う一軒を探してみてください。
萩温泉郷とは? 実は「ひとつの温泉街」ではない
萩温泉郷は、萩市内の複数の源泉・温泉施設をまとめて呼ぶ名前です。2004年に「はぎ温泉」が開湯したことをきっかけに、もともと自家源泉を持つ宿などとともに「萩温泉郷」と呼ばれるようになりました。
ここで知っておきたいのが、「萩温泉郷」と「はぎ温泉」は同じ意味ではないこと。たとえば萩本陣は自家源泉の「萩本陣温泉」を利用し、一方で「はぎ温泉」を利用する旅館もあります。同じ萩でも、宿によってお湯の由来や過ごし方が異なります。
全国的に有名な温泉街のように一か所に旅館が集まっているわけではありません。萩城下町、松下村塾の近く、川辺、海を見下ろす笠山など、町歩きと温泉を組み合わせられることが萩ならではの面白さだと思います。
参考:山口県公式観光サイト「萩温泉郷」、萩市観光協会「宿泊・温泉」
まずは旅の気分から。5つの宿の選び方
- 温泉をたっぷり楽しみたい:萩本陣。自家源泉と14種類の湯めぐり。
- 城下町の中に泊まりたい:北門屋敷。歴史的な町並みと庭園。
- 静けさと料理を大切にしたい:常茂恵。大正創業の老舗旅館。
- 川辺の夕景に浸りたい:雁嶋別荘。テラスと半露天風呂のある客室。
- 海を眺めて温泉に入りたい:萩観光ホテル。笠山の高台から望む萩湾。
萩温泉郷で泊まりたい、おすすめ宿5選
1. 源泉の宿 萩本陣|湯めぐりそのものを旅の楽しみに
歴史好きにも温泉好きにも、最初に紹介したいのが萩本陣です。吉田松陰の松下村塾に近い場所にあり、萩らしい史跡巡りと温泉を組み合わせやすい宿。
館内の「湯の丸」では、庭園を囲むように浴槽が並び、男女合わせて14種類の湯めぐりを楽しめます。外を歩き回ったあとも、宿に帰ってからまだ「どの湯に入ろう」と迷えるのがうれしいところ。日帰り入浴にも対応しています。
私が特に面白いと思ったのは、その温泉が生まれた経緯です。萩本陣の公式サイトによると、松村勇氏は地域のために温泉が必要だと考え、掘削に挑戦。約2年をかけて1995年、地下2,350メートルから湯を掘り当てました。
「萩をもっと魅力ある場所にしたい」という挑戦によって生まれた温泉がある。その物語も、旅先を知る面白さのひとつではないでしょうか。
こんな旅に:松下村塾を巡る歴史旅/お風呂好きの温泉旅/温泉を主役にした一泊。
2. 萩城三の丸 北門屋敷|城下町の空気を、夜まで味わう
城下町に泊まること自体を旅の目的にするなら、北門屋敷に注目したい。
場所は萩城の三の丸にあたる堀内地区。武家屋敷の白壁や石垣など、萩ならではの景観が残る一帯です。
この宿の魅力のひとつが、和洋の花木が調和する英国式庭園「イングリッシュガーデン」。日本の伝統的な城下町の中に、色とりどりの花々が咲く洋風庭園が広がるという、意外な組み合わせを楽しめます。
昼間は観光客として町並みを歩いていても、夜になって宿の門をくぐると、静かな萩の別の表情に出会えるはず。歴史を説明する展示だけでなく、古い町の中で実際に一夜を過ごすという体験に価値があると思います。
こんな旅に:萩城下町散策/落ち着いた記念日旅行/庭園のある宿で過ごす休日。
3. 萩の宿 常茂恵|「萩の迎賓館」が守ってきた静けさ
旅館で過ごす時間そのものを大切にしたいなら、常茂恵(ともえ)がおすすめ。
創業は1925年(大正14年)。公式サイトによると、萩を訪れる客人を迎える宿が必要だと考えた郷土の名士たちの声から誕生した旅館です。庭園を眺め、土地の食材を使った料理を味わい、静かに過ごす。そんな滞在が似合います。
館内では萩の天然温泉を利用しており、檜の天井と黒御影石を用いた浴場が特徴。巨大な温泉施設で何度も湯を巡るというより、落ち着いた環境でゆっくり浸かるイメージです。
幕末の萩も魅力的ですが、その後に町を訪れる人々を迎えてきた歴史にも目を向けたい。観光地としての萩を育ててきた宿に泊まるのも、歴史旅のひとつのかたちだと思います。
こんな旅に:夫婦や大切な人との滞在/食事とおもてなし重視/静かな庭園を楽しむ旅。
4. 萩八景 雁嶋別荘|川の向こうへ、夕日が落ちていく
宿で眺める景色にこだわるなら、雁嶋別荘(がんじまべっそう)も候補に入れたい。松本川沿いに建つ、全16室の水辺の宿です。
客室にはテラスと半露天風呂が備わり、時間とともに表情を変える川や町並みが広がります。江戸時代から親しまれてきた萩の風景「萩八景」に思いを重ねながら、何もしない時間を楽しめそうです。
とりわけ、日が傾き水面の色が変わる時間が、この宿の主役ではないでしょうか。慌ただしく名所を回った一日の終わりに、少し立ち止まって、ただ景色を眺める。萩という町の余白を味わう滞在です。
こんな旅に:川辺の夕景/客室で過ごす時間重視/静かな二人旅。
5. 萩観光ホテル|笠山の露天風呂から、海を見渡す
城下町の路地を歩いたあとに、視界いっぱいの海を眺めたい。そんな気分なら萩観光ホテルがよく合います。
笠山の中腹に位置し、萩湾を望む展望露天風呂が魅力。ここで利用されているのは萩温泉郷の源泉のひとつ「はぎ温泉」です。海の眺めは天候や時間帯で変わりますが、その変化も自然の中に泊まる楽しさでしょう。
地元の旬の食材を使った料理や、旅のスタイルに合わせて選べる客室も特徴。城下町の中心部から少し離れているぶん、歴史散策とは違う萩の風景を見つけられます。日帰り入浴にも対応しています。
こんな旅に:海の見える露天風呂/景色を楽しむ温泉旅行/笠山周辺も巡るドライブ旅。
どこに泊まる? 迷ったときの選び方
「自家源泉の湯めぐりと萩の旬を堪能したい」なら萩本陣。「城下町で、和と洋の美に浸りたい」なら北門屋敷。「静けさや料理を楽しみたい」なら常茂恵。「客室から川の夕景を眺めたい」なら雁嶋別荘。「露天風呂から海を見たい」なら萩観光ホテル。
この5軒は、単純に「どこが一番いい」と比較しにくいほど、滞在の性格が違います。宿泊費だけで決めるよりも、翌朝どんな景色の中で目を覚ましたいかを想像して選んでみてはいかがでしょうか。
また、城下町に近い宿と笠山にある宿では移動の考え方も異なります。徒歩で歴史散策をするか、車で海辺や自然まで足を延ばすか。宿選びと観光ルートはセットで考えるのがおすすめです。
萩温泉郷について、初めての人が気になること
萩温泉郷と「はぎ温泉」の違いは?
萩温泉郷は萩市内の複数の源泉を含む呼び名。「はぎ温泉」はその中のひとつの源泉名です。萩本陣の「萩本陣温泉」など、別の源泉を利用する宿もあります。
萩では宿泊せずに日帰り温泉だけでも楽しめる?
はい。今回紹介した中では、萩本陣と萩観光ホテルが公式に日帰り入浴を案内しています。ただし、受付時間や料金、混雑時の制限は変更されるため、訪問前にご確認ください。
温泉を目当てに萩へ行っても楽しめる?
もちろん。温泉に加え、江戸時代の町並み、松下村塾や高杉晋作ゆかりの史跡、日本海の景色、萩焼、旬の食と、過ごし方の選択肢が多い町です。観光の「おまけ」に温泉を付けるのではなく、温泉を中心に旅を組み立てても面白いと思います。
萩を日帰りで通り過ぎるのは、もったいない
萩の魅力は、幕末の偉人を知ることだけではありません。城下町に残る静けさ、川に落ちる夕日、笠山から望む海、そして夜に浸かる温泉。歴史の町だと思って訪れた先で、思いがけない時間に出会えるかもしれません。
知らなかった萩を、もうひとつ見つける。 そのために一泊してみるのも、いい旅の始め方だと思います。
※営業時間、料金、温泉利用条件、送迎などは変更される場合があるため、予約・訪問前に各施設の公式サイトでご確認ください。
執筆:R.







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